青年部 ゼロ句会12月報告 by黒岩徳将
ゼロ句会12月報告 黒岩徳将
ゼロ句会が12月で1周年を迎えた。私事だが、東京に移住して1ヶ月でゼロ句会幹事を担当することになった。8割方参加してくださるレギュラーメンバーに加えて、毎回新しい方が訪れてくださるので毎回10人前後で句会ができている。12月も新しい方が4人、そのうちの1人は石川県から用事のついでにお越しくださった。初めて1年間は、続けることと、人を呼ぶこと、そして方法を模索することしかないと思っていたので、まずまずの一年だったと言える。
ゼロ句会は「総合格闘技句会」と位置づけている。特定の指導者はおらず、各々が自分たちの俳句観に合わせて好きな句を出し、好きなように意見する。意見を引き出し、どこまで対立点を浮き彫りにできるかは、幹事にかかっていると言えよう。私が「ボクシング、サンボ、カポエラーでもなんでもしてください」と言うと、隣の宮川氏(現代俳句協会員)はすぐに格闘技のシャドーを始める。たとえば次のような句が提出され、それに対して議論がおこる。
赤羽の朝やおでんの香のしたる 中島潤也
・赤羽が動かない。このおでんはまずい。
・綺麗ではない世界を描いている。汚い夜を経ての朝。「したる」本当に必要か。
・「あ」で始まる音がいい。もし難癖をつけるなら。東京在住者でないとわからないのでは。
- 「匂ふ」もあったのでは
・すでに山田孝之のドラマが流行しているなど、「赤羽」といえば汚い町だというイメージが東京人には定着しすぎているのでは
管理人一言:赤羽は汚い町ではありません。私の会社があるのですから。しかしおでんのにおいは朝からします。それは朝からやってる立飲み屋がこの町の歴史だからです。この町は陸軍の被服廠があって朝帰りの工員が多かったのです。今は大きな団地です。さらにおでんの反対側の街並みには、「股間若衆」(木下直之著)のブロンズ像がある文化都市です。是非きてください。
終はるまで葱のささつてゐるリュック 西生ゆかり
・何が終わっているのかが最後まで明示されない。葱は見えている。省略によって歳末感、寂しげな感じも出ている。
・時間軸の提示は必要か。リュックがいいのか。「ゐる」も気になる。でも景に力がある。ださかっこいい。
・リュックに「にょきっと出る」感じがある。「終はるまで」は現実を乗り越えようとしている。この句の背景には「夢の世に葱を作りて寂しさよ 永田耕衣」があるかもしれない。
- 謎過ぎてついていけなかった
半纏を羽織りて実家フルーチェ飲む 谷村行海
- 小さい頃に親に作ってもらったような食べ物の代表の「フルーチェ」
- 整理されていないゆるゆるの文体が実家の精神状態を表している。
- 実家とフルーチェは合っている。フルーチェは「飲む」でいいのか。下五を字余りにしてまで「飲む」と言ったところが面白い。
- オチをつけるために「半纏を〜」で始めている。
- フルーチェが強くて半纏が殺されていないか
・「は」の音で合わせている。
ポーと凩汝の体を考へる 生駒大祐
・凩の中の空気感で体の構造を考えるという景が面白い。一種の覚醒した状態。
- 凩→寒い→気遣う ではなく、即物的流体力学的イメージな「体を考える」ではないか。人間をモノとして描くのが面白いのでは。
- アイデンティティに関して考えている句だととらえた。
- そもそも凩はポーとするのか?という季語の裏切りがある。
天皇誕生日サンシャインシティ 宮川ぶん学
という句も出た。巣鴨プリズンをイメージした句だそうだが、モノの提示でどこまで読み切れるだろうか。このような挑戦も必要なのだろう。
ゼロ句会は現代俳句教会青年部のブログで案内しています。基本的に第三土曜日に開催しています。お問い合わせは
までお願いいたします。
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