国際俳句研究会開かれる

2018/07/19
国際部の勉強会が協会図書室で行われた。
今回は、アメリカの俳人デイヴィッド・g・ラヌー氏を迎えて、「Gendai Issa]と題して、現在のアメリカはもとより世界の俳人の中で一茶の俳句がどのように考えられているかという貴重な話をしていただいた。

サングラスをかけて一見ブルース・ウイルスのような
デイヴィッド・g・ラヌー氏
手に持っているのは贈られた達磨である。


研究会に出席の面々と記念写真。
皆さん英語が達者で、筆者は日本語で対抗した。
ラヌーさんはかなり日本語も話す。

ラヌーさんの経歴に関しては下記のHPに詳しいので参照されたい。
http://haikuguy.com/issa/new.html

略歴
      1.Professor of English at Xavier University of Louisiana.
       2. 元アメリカ俳句協会代表(会員数約800人)
      3.小林一茶の俳句10,000句をコメント付きで英訳 

さて、講演の内容だが、ラヌー氏から二枚の資料が渡され、それに基づいて講演はなされた。そこに示されたものは、一茶の句や生き方からインスピレーションを得て、日本以外の俳人がそれに応える形で作ったアンサー俳句であった。付け句と考えてもいいかもしれない。

ラヌー氏は概略的に、一茶の俳句に外国の俳人は「人情」を見言い出していて、現在の孤独で非人間的で差別が横行している世界へのアンチテーゼとなっていると考えていると、言った。アンサー俳句はそのような姿勢を示した句になっていた。その例句を示す。

一茶の句
痩蛙まけるな一茶是に有
scrawny frog,hang tough!
Issa
is here
これに対するアンサー句
①’
one ant circles
the toilet rim
new roommate
新しき友は便座を歩く蟻(筆者翻案)

①’’
first blossoms
he identifies
as bisexual
両性具有の我是に有り初桜(筆者翻訳・・・下手だな)

こほろぎの寒宿とする衾哉
the cricket's
winter residence...
my quilt
これに対して

②’
night storm
i'm thinking about
the dolls in the attic
屋根裏の人形思う夜の嵐(筆者翻訳・・・これは上手くいった)

牢屋から出たり入つたり雀の子
in and out
of prison it goes...
baby sparrow
これに対して
③’
border crossing-
a cabbage butterfly flits
from daisy to daisy
国境や菊から菊へ紋白蝶(筆者翻訳・・・べた過ぎる)

ラヌー氏曰く
アメリカの俳人は(Like writes Issa) 一茶のように書こうとしている。
人情、思いやりは知的な意識が必要
単なる客観写生だけではない
自己は自然の一部として存在している
この考えは一茶に通じていて
江戸の一茶が現代に通じるところである。

人間味を俳句に入れるのはよくないという意見は
アメリカにもあってアールマイナー(Earl Roy Miner)はその考えだが
ラヌー氏は、そのような客観写生だけで、自分を入れないのは
句の半分しか出来てないことになるのではないか?と考えているといった。

*筆者の感想

感想:こんなにも一茶を読んでいる人が世界にいることが驚き
加えて、日本人なら恥かしくなるような世界平和や差別への抗議などを
明確に句の中に織り込んでいる。それが詩であり俳句であるとしているようでもある。

驚き:これは参加者から教えていただいたのだが
border crossing-
の「-」の部分は「切れ」を表していて
アメリカの俳人は「切れ」を充分に認識していて
教科書レベルの知識であるとのこと。

また、{こほろぎの寒宿とする・・・}の「の」は文語文法上の
格助詞で口語で「が」の意味であるが、ラヌー氏は的確に
英訳していた。
一万句も訳しているのだから当然だと指摘されて
全く失礼な指摘と反省したが、このへんも驚いたところである。

国際部はときどき外国の俳人を招待しているが
じつにもったいないほどの参加者数であった。
もっと広報してたくさんの方々の参加を得たいものだ。










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